夢への扉

その76「台風24号による停電について」編

 9月30日に非常に強い勢力で本州を直撃した台風24号の影響で、静岡県西部を中心に平成最大規模とも言われる停電が発生しました。多くの皆さんの自宅も突然の停電で大変だったことと思います。当社でも、いくつかの工場が停電しました。中でも竜洋工場は10月1日から2日昼までの1日半にわたる長い停電となりました。多くの社員の皆さんが身を粉にして働いてくれたことに大変感謝しています。現地で力を貸してくれたお客様、またそれぞれの現場で製品をつなぐために尽力してくれた仕入れ先様にも、本当に感謝しています。今月号は、皆さんへの感謝とともに、今回の停電を善き教訓とするため、整理してみたいと思います。
 
1.人命第一
2.早期復旧
3.お客様を止めない
 
ソミック石川は、これまで震災・津波への対応を考え、このような考え方で防災を行ってきました。今回の停電においても、この考え方に沿って整理していきます。
 
1.人命第一:全てに優先するのは人命であり、社員とその家族が健康でいること
■安否確認
どんな災害であっても、まず行わなければならないのは、社員並びにその家族の安否確認です。社員本人とご家族の皆さんが健康であることが全てに優先します。
 
2.早期復旧:設備・工場を復帰させ、生産が再開できる状態に戻す
■発電機
今回の復旧とは、電気の復旧です。必要とされる発電機やケーブルを接続する方法が分からず時間が掛かりました。発電機はどこにあり、誰がどのようにつなぐのかを事前に決めておく必要があります。
 
3.お客様を止めない:「お客様を止めない」とは、お客様が必要なものを造り、製品をお客様の手元まで届けること
■生産
生産を行うにあたり大切なのは、かんばんを正しく使い、在庫量を常に把握するとともに、挽回のためにはラインの信頼性・汎用性を高めておき、作業者の多能工化を行っておくことです。すなわち、日頃からTPSを徹底することです。また、サプライチェーンを把握しネック工程をつかんでおくことが必要です。
■物流
各納入先のデッドラインに対し、遅れが出ないように特便を走らせます。そのためには、ダイヤサイクル表を常に把握し、特便を定期化することなどで、必要となるトラックの大きさ・台数を明確にすることです。
 
 ★今回気付いた大切なこと:体制と役割、心構え
■体制と役割
<体制>
災害に対し体制を整えます。今回対策本部は、社長以下各役員ならびにリスク管理室が集まりましたが、体制・人員は決まっているものの、一人ひとり役割が曖昧で他人任せになっていたと思います。今一度、各役員一人ひとりが自分の役割を考え、理解し、実行することが必要です。
 <現場>
生産現場では、現場全体を統括するリーダーともに生産、出荷をおさえる責任者がカギとなります。各現場での人員の配置と、それぞれの役割を決めておく必要があります。それには、現場のオヤジを育てることです。
※現場のオヤジ:生産現場を束ね、モノ作りの全責任を負う現場の組長・工長のこと。トヨタでは尊敬を込めて「オヤジ」と呼んでいる。
 
■リーダーの心構え
 リーダーの心構えとして、「絶対にお客様を止めてはいけない」という思いを持たなければなりません。また、緊急時には絶対に慌てない、腹をくくりドタバタしないことが大切です。現場に細かいことを聞くのではなく、全体の状況をつかみ、情報が不十分であっても勇気をもってハッキリと指示することです。また、常に共に働いている仲間たちの健康や心にも気を配ることが大切です
 
 
 戦時中、石川鐵工所は、トヨタ自動車にボルトを収めていましたが空襲が激しく、納入が難しくなりました。その時、3代目社長の石川薫明は、従業員にボルトを詰めたリュックサックを背負わせ、汽車に乗って届けることを指示しました。また空襲で汽車が止まることも考え、幾便かに分けて収めたそうです。これが、当社にとっての「お客様を止めてはいけない」の心です。